2023.07.16 Sun
二度とない人生だから 坂村真民
先日、50歳の誕生日を迎えました。途端に身体のあちこちが変調、人間って動物なんだなぁと身をもって実感しています。四季に例えると芽吹きの春、花を咲かせる夏を過ぎて「秋」にいることは間違いありません。実を収穫して、次の誰かに手渡す種子を取り出す時でもあります。そう考えると歳を重ねるのも悪くないぞ、と思いながら、今や手放せなくなった老眼鏡を相棒に敬愛する方からいただいたばかりの本の一文一文を噛み締めています。
本を読み進めているうちに、ふと中学生の時の英語の先生のことを思い出しました。私の人生の中で「先生」として認識しているのは、幼稚園の年少組の時の担任の先生とこの英語の先生2人だけです。この英語の先生は白髪で品があって文学にも造詣が深く、高村光太郎の智恵子抄の初版本を持っているんだとか、時々そういうことを本当に楽しそうに話してくださいました。私が英語を好きになったのもこの先生に出会ったからです。卒業前に、みんなの前で自分の好きな詩を送ります、と読んでくださったのが坂村真民の「二度とない人生だから」です。
二度とない人生だから 一輪の花にも 無限の愛をそそいでいこう 一羽の鳥の声にも 無心の耳をかたむけていこう
二度とない人生だから 一匹のこおろぎも ふみころさないように心していこう どんなにか よろこぶだろう
二度とない人生だから 一ぺんでも多く 便りをしよう 返事は必ず書くことにしよう
二度とない人生だから まず一番身近な者たちに できるだけのことをしよう 貧しいけれど心豊かに接していこう
二度とない人生だから つゆくさのつゆにも めぐりあいのふしぎを思い 足をとどめてみつめていこう
二度とない人生だから のぼる日 しずむ日 まるい月 かけていく月 四季それぞれの 星々の光にふれ わが心をあらいきよめていこう
二度とない人生だから 戦争のない世の実現に努力し そういう詩を一編でも多く 作っていこう わたしが死んだら あとをついでくれる 若い人たちのために この大願を書きつづけていこう
「コピー入れておきます」と手書きしたこの詩をノートに挟んで渡してくださいました。先生から受け取った種子はちゃんとここに残っています。私が誰かに渡せる種子って何だろう?