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人の手は尊い

モノ(もちろん洋服もアクセサリーも絵もその他諸々含め)好きな私ですが、年々グッとくるハードルが上がって舞い上がる機会も減ってしまいました。成長している証拠、と前向きに捉えつつ常々何かいいモノないかな、と探してしまうのはもはや私の性なのでしょう…が!素敵だなぁ、欲しいなぁと思うものはやっぱりあって、それは幸せなことだなぁと。今、私がグッとくるのは誰かが作った痕跡がしっかりとあってオリジナリティを感じるもの。それからもうひとつはパッと見、普通に見えるけど実は作り込んであって使ってみて気付く美しさや厳しさのあるもの。お互い対極にあるようだけど人の手で作られたことには変わりなく、最近人間の手って本当にすごいなとよく思うようになりました。糸を編み上げるのも人の手、金属を打つのも人の手…人の手仕事は尊い。そこを声高に主張せずにそっと佇むモノに私は惹かれます。

TÍSCAR ESPADASの魅力

あっという間に12月も半ばですね。今年は暖かな冬(今日の最高気温は20℃だとか、まったくどうかしてるぜ)のせいか、全く年末感のない毎日を過ごしています。

 

11月にTÍSCAR ESPADASのデザイナー、ティスカルとパートナーのケビンがお店に来てくださいました。スペインからはるばる神戸までようこそ!ありがたいの一言に尽きます。彼女の作る服の特徴としてアプローチの仕方やパターン、色合いがとても独特かつ複雑で、アートの空気を感じると言いますか、中世の空気を感じると言いますか…そんなところに惹かれて取り扱いを始めたのですが、想像通りご本人もとてもチャーミングな方で、いろんなことに興味津々といった感じがビシビシ伝わってきました。そしてやっぱりTÍSCARの洋服がお二人ともすごく似合っていました(そりゃ当然なんですけどね、何よりお二人ともとても長身)。次のコレクションも楽しみにしてて!とのことなので、今からワクワクしています。

 

もちろん全身TÍSCARの洋服でコーディネートするのはかっこいいこと間違いないのですが、私はあまり同じブランドの洋服で固めるのが好きではないので、ここは一つ手持ちの洋服を駆使してコーディネートしてみたい。(話が若干逸れますが、私がコムデギャルソンを尊敬しているけどほとんど着なくなったのは、他ブランドとのコーディネートがとても難しく、結局全身コムデギャルソンで着るのが一番完成度が高く美しい、という結論に達したからです。今は自分のフィルターを通して気に入ったものを高い安い、有名無名に関わらず組み合わせて着るのが楽しくて、それがずっと続いています。)TÍSCARの洋服は紐を縛ってシルエットを変えたりアレンジが効くものも多いので、自分の好みに近付けながらまずはシンプルなアイテム、白シャツなんかを合わせてサラッと楽しむことからスタートして、ちょっとずつ癖の強いものを合わせてコーディネートの難易度を上げていくのがおすすめです。あと、私の経験上、こういう唯一無二な形かつ地味な色めの服、というのはクローゼットの中で埋もれずに長く生き残る率が高い。好きが継続するというんでしょうか。なので高額ではありますが、そういう意味では清水の舞台から飛び降りても骨折しません(笑)のでご安心ください。アート作品みたいで特別な気持ちになれるTÍSCARのお洋服たち、ぜひ手に取ってみてほしいです。ちなみに私はコレクション毎に1つずつアイテムを増やしていて、今シーズンは12月にナバス展があるし〜と思い狙っていたパンツを購入したのですが、展示初日に着用しているとまぁ褒められること褒められること。自分が素敵になったかのような錯覚を味わいつつ、服の持つパワーを改めて実感する一日でした。いやほんとに、服ってすごいです。

 

Everything is so fast nowadays.

Taking your time is tremendously important in the early years of creativity .

創作の初期には、時間をかけることが非常に重要だ。

私のエレガンス

コーデュロイのショーツ、鏡の前でタイツとニットと合わせながらふとだいぶ前に雑誌で読んだ記事を思い出しました。パリのアンティークショップの女主人は服を買うのが大嫌いだそうで、ある日とうとう着る服がなくなり、家から一番近いブティックに駆け込ん仕方なくセーターとスカートを3枚ずつ買ったという話。そんな服への無頓着さとは裏腹に身体に沿ったセーターとタイトスカート、タイツにヒールのあるブーツ姿がたいそうエレガントで美しく、洋服はずいぶんはっきりとその人の内面を写し出すものなのだなと私の記憶に深く刻まれました。数ある服のバリエーションの中でも私は壊滅的にタイトスカートが似合わない(原因はコンプレックスの塊であるメリハリのない脚)ので、せめてエッセンスだけでもと組んだコーディネートが意外と私らしく、かつ新鮮な感じにおさまりました。どんなに素敵でもまんま真似するのはやっぱり野暮の極み、こうやって咀嚼して何とか自分らしく見せるのがおしゃれの楽しさではないかなぁ、と思った初秋の朝です。靴はエレガントに革靴だな(4cmヒールが限界ですけどね苦笑)

ファッション・リイマジン

もうすぐ10月です。日中はまだまだ暑いですが、朝晩は秋の気配を感じるようになりました。(余談になりますが今年はカメムシ多くないですか?山が近い我が家、R氏と2人でギャーギャー言いながら格闘しています)

 

久しぶりに映画館へ出掛けました。『アステロイド・シティ』を観たいとずっと思っていましたが、上映時間が夜に移動してしまい断念。その代わり、これも前から気になっていた『ファッション・リイマジン』の上映がちょうど始まったのでこちらを選択しました。MOPというブランド、お恥ずかしながら知らなかったのですが、ここのデザイナー、エイミーは強い信念を持って、自分の作るもののルーツを探っていくのです。私も大量生産・消費にはずっと疑念を抱いていたものの、ここまで明確に一体何がまずいのか?ということを考えたことがなかったので、視界がひじょうにクリアになりました。(「毎年作られる服の数=兆単位 その5分の3が、購入した年に捨てられる」 どうかしてるぜって感じなんですけど) 私の着ているカットソーの綿花はどこからやって来たのでしょう?お気に入りのニットの毛糸、羊はどこの牧場で何を食べてた?…まぁ、ほとんどわからないというのが実情です。シンプルなことなのにね。綿花の栽培はダークな部分が多いことは知っていましたが、劇中でもやっぱり直接農家に出向くことによい返事をもらえなかった=見せれない、ということ。いろんなしがらみがあってのことですが、やっぱり何事も名前を明確にすると良くも悪くも責任が伴うからなのでしょう。後ろめたいことがあれば尚更です。それからいくら正論を通して作ったものでも高いばかりでは売れない、そんな痛いところも描かれていて、選んで売る立場の私としても「うっ」となりました。売れなければ続けて作れない、これも事実。服との付き合い方を考えるいろんな気付きが多いので、お洋服好きの方、そうでない方も機会があれば一見の価値あり、です。ぜひ観てください。

 

スモールビジネスを展開している私の力は微力かもしれませんが、少なくともただ売れればいいとは思っていなくて、やっぱりきちんと作られたものを自分の目で選んで、責任を持って必要としている人の手に適正価格で届けるのが私の仕事と思っています。ちなみに今、LUCAで展開しているブランドの中ではSONOがサスティナブルな姿勢で素材の産地や生産工程を明確にしています。そういうブランドが一過性のものではなく定着して増えてほしいし、古着もただの流行りで無駄に消費される方向へ行かずに一度世に出た洋服の真っ当な形、循環する当たり前の形として機能してほしいなと思います。

 

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